続発するインターネット上の誹謗中傷~相手を特定する発信者情報開示請求

SNSが発達していることもあり、誰でも気軽に匿名でコメントを投稿することができるようになりました。

しかし、あまりにも悪質な誹謗中傷コメントに気が病んでしまい、ついには被害者が亡くなられたケースがありました。

これを契機に、社会的に誹謗中傷に対する投稿者を特定する手続である発信者情報開示請求が知られることになりました。

とはいえ、発信者情報開示請求を弁護士に依頼するにしても、その手続がどのように進められて投稿者が特定されるのか、手続の流れについてご質問・ご相談を受けることが多くあります。勿論それに対しては誠実にご回答申し上げておりますが、周知の意味でも今回のコラムでご紹介したいと思います。

債務整理とは 

 

債務整理とは、債務について減額や返済猶予などの方法により、債務に苦しむ人に向けた手続をいいます。 

借金苦から抜け出すための手続ともいえ、任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の4種類があります。 

発信者情報開示請求とは

文字通り、発信者情報開示請求とは、発信者(投稿をした人)の情報の開示を求める手続をいいます。根拠法は、プロバイダ責任制限法(正式名称は特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)です。

この法律が制定された平成13年の背景としては、冒頭でも少し触れましたが、今ほどインターネットが盛んではありませんでしたが、それでもインターネットが普及したことにより、匿名掲示板などで他人を誹謗中傷する書き込みが社会問題となっていました。

しかし、誹謗中傷の被害を受けた被害者の権利利益を救済する一方で、発信者のプライバシーも守らなければならないという両者のバランスを考慮しなければなりませんでした。そこで、このような場面でプロバイダがスムーズに削除等に対応できるようにするために、プロバイダ責任制限法が制定されたのです。  

発信者を特定するためには2段階の手続を経る必要があった

これまで、インターネット上の誹謗中傷に対して、投稿者を特定するためには2段階の手続を経る必要がありました。

単純に考えれば、X(旧Twitter)やInstagram、5ちゃんねるなどで誹謗中傷されたら、そのサイト管理者や運営者に発信者情報開示請求をすれば、すぐに投稿者が特定されると思われるかもしれません。


しかし、これはインターネットの仕組みといいますか、システムの話になってしまいますので、詳細は割愛しますが、結論から言いますと、こうしたサイトの管理者や運営者は投稿者の氏名や住所などの個人情報を保有していません。保有している情報は、投稿者がそのサイトにアクセスした際のIPアドレスやタイムスタンプなどの情報のみです。

IPアドレスから特定できる主な情報は、投稿者の国と地域、投稿者が利用している経由プ
ロバイダになります。


そのため、従来の制度を利用する場合は、①サイト管理者にIPアドレスの開示を受けて、②そのIPアドレスから経由プロバイダを割り出し、経由プロバイダから投稿者の氏名や住所を特定する、という2段階の手続を行うことになります。

①サイト管理者からIPアドレスの情報を得る~発信者情報開示請求仮処分の手続 

以上の大まかな流れからすると、まずはサイト管理者から投稿者のIPアドレスの情報を得る必要があります。ここでとられる手続が仮処分の申立てになります。

仮処分申立ては裁判所に申し立てるわけですが、申し立てれば全て認められて、IPアドレスの開示を受けられるわけではありません。

IPアドレスの開示を受けるためには、申立人、つまり誹謗中傷によって被害を受けた被害者のどのような権利が侵害されているかを裁判所に認めてもらわなければなりません。

 
 

②IPアドレスから経由プロバイダを割り出し、投稿者の氏名や住所を特定する~発信者情報開示請求訴訟の手続 

仮処分によって、裁判所から権利侵害があると認められ、IPアドレスの開示を受けたら、経由プロバイダ(アクセスプロバイダ。ドコモやKDDIなど)に対して、投稿者の氏名や住所を開示するよう求める訴訟を提起します。 

訴訟では、双方の主張反論が行われ、最終的に裁判官が開示請求を認めるか判断することになります。 

主張が認められれば、投稿者の氏名や住所などの情報が開示され、特定することができます。 

 

今回は特定までということでしたので、裁判手続は2回になりましたが、投稿者特定後、その者に損害賠償請求訴訟をするのであれば、合計3回の手続を行うことになります。 

【新制度】発信者情報開示命令

その後、プロバイダ責任制限法は何度か改正を踏み、令和4年10月からインターネット上で誹謗中傷した相手を特定するための新たな制度が創設されました。

従来の発信者情報開示請求では、ご紹介した通り、2段階の手続を経て行うのが一般的でした。

しかし、これでは被害者にとって時間も費用もかかってしまうことが課題となっていました。そのため、新制度にでは1回の手続で投稿者を特定することができるようになりました。

具体的な手続は、

①サイト管理者に対して発信者情報開示命令申立てを行うと同時に、発信者がどのアクセスプロバイダを使ったのか情報の提供を求める提供命令の申立てをします。

②提供命令の申立てにより、サイト管理者からその情報を提供されます。


③提供されたアクセスプロバイダの情報を基に、アクセスプロバイダに対して、発信者情報開示命令(場合によっては消去禁止命令申立ても)を申し立てます。同時に、サイト管理者にアクセスプロバイダに申し立てたことを通知します。

④そうすると、サイト管理者がそのアクセスプロバイダにIPアドレスやタイムスタンプなどの情報を提供します(例えば、Xの管理者であるX Corp.からKDDIに、この時間この住所(IPアドレス)からXにアクセスしたという情報が直接提供されます。)。

⑤裁判所での審理の結果、権利侵害があると認められたら、アクセスプロバイダから投稿者の情報が提供されます。

 

このように、新制度では、1つの手続で、サイト管理者とアクセスプロバイダを相手に、投稿者を特定できるようになっています。

ちなみに、従来の2段階目の手続は訴訟でしたが、新制度では非訟事件として扱われますので、一連の手続が時間と費用の負担が軽減されることになります。 

発信者情報開示請求をご相談・ご依頼する際の注意点 

さて、投稿者を特定するための手続について大枠でもお分かりいただけたかと思います。

ここからは、実際にインターネット上で誹謗中傷の被害に遭い、弁護士に相談・依頼する際の注意点について簡単にご紹介します。

ログの保存期間

まず注意が必要なのが、ログの保存期間です。サイト管理者(コンテンツプロバイダ)やアクセスプロバイダといったプロバイダは、アクセスログの保存期間3か月から6か月に設定しています(一定期間保管する義務が定められているわけではありません。)。
そのため、例えば、誹謗中傷だと思われた投稿から1年後に投稿されたことを知った場合、多くはアクセスログの保存期間が経過してしまっていますので、投稿者を特定することができなくなります。

このような事態にならないためにも、発信者情報開示請求は迅速な対応が必要になります。

 

証拠

投稿者を特定するためには、裁判手続で行うのが一般的ですが、裁判官にご自身の権利が侵害されていると認めてもらうためには、客観的な証拠が必要になります。

中でも必要不可欠なのが名誉毀損等にあたる投稿のスクリーンショット(URLや投稿日時も写っているもの)です。その他には相手のアカウント情報なども有力な証拠となるでしょう。

投稿者によって削除されてしまうと見れなくなってしまいますので、誹謗中傷にあたるのではないかと思われたら、速やかに保存し、弁護士に相談しましょう。

 

誹謗中傷に当たるか、開示請求が認められるかはケースバイケースで判断される

一般的に、誹謗中傷とは、根拠のない悪口を述べ、他人の名誉を傷つけた場合をいいます。

例えば、名誉権の侵害(名誉毀損)があったのであれば被害者の社会的評価を低下させるものであったのか、違法性阻却事由はないか、を検討しなければなりません。

しかし、実際にはこの言葉なら誹謗中傷に当たり開示請求が認められるという絶対的な基準はありません。この辺りは、専門的な知識を有する弁護士に相談することをお勧めします。

プロバイダ責任制限法は情報流通プラットフォーム対処法へ

発信者情報開示請求とは少しそれますが、令和6年に現行のプロバイダ責任制限法は、プラットフォーム事業者に一定期間内の削除申出への対応を義務付ける規定が新たに設けられた情報流通プラットフォーム対処法と名称が変わり、改正されます(公布日は令和6年5月17日、施行は公布日から1年以内の予定)。

これにより、誹謗中傷の投稿を迅速に削除することが可能になりそうです。こちらについては別の機会でご紹介したいと思います。

最後に

インターネット上の誹謗中傷に対しては、迅速な対応が必要になります。

発信者情報開示請求では専門的な知識が必要となりますので、インターネット上の誹謗中傷でお困りで、投稿者を特定したいが弁護士に相談した方がいいのか迷われている方は、お気軽にご相談ください。