2種類の自己破産手続について
破産手続とは、債務者の財産を清算する手続をいいます(破産法2条1項)。裁判所での手続の中で、債務者の財産を調査し、換価して、債権者に弁済又は配当する手続になります。
このように自己破産は、借金返済が難しくなった方に適した手続となっており、裁判所の手続を経て、免責許可決定を得られれば、一部の借金の返済義務はなくなります。
裁判所の手続では、同時廃止事件と管財事件という2種類の手続があります。
同時廃止事件
破産手続の概要でお伝えしましたが、破産手続は、債務者の財産を換価して、最終的に債権者に弁済や配当することになります。しかし、中には債務者自身の財産が全くなく、債権者に弁済できるだけの資金をねん出することができないケースももちろんあります。
このような場合は、裁判所は破産手続開始決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならないとされています(破産法216条1項)。
ここでいう破産手続廃止の決定とは、破産手続を終了することをいいます。
つまり、同時廃止とは、破産手続開始と同時に破産手続を終了させる事件ということです。
管財事件
破産法上、破産手続は、開始の決定と同時に、破産管財人を選任しなければならないとされています(破産法31条1項)。つまり、破産手続において、管財事件が原則であって、破産手続の費用を支弁するのに不足するおそれがあるときに限り同時廃止事件となります(破産法31条2項)。
そもそも破産とは、債務者の財産を換価して、適正かつ公平な配当手続のことをいいますので、管財事件が原則とするのは納得できるでしょう。ただ、実務上は個人の自己破産であれば同時廃止事件として申し立てるのが一般的であり、法人や法人代表者、個人事業主の破産は必ず管財事件となります。また個人の自己破産であっても、借金の原因がギャンブルや浪費などは免責不許可事由に当たり、管財事件となるケースが多いです。
同時廃止事件か管財事件か
これから破産手続申立てを考えている方にとって、同時廃止事件となるか、管財事件となるか、その基準はあるのか、気になるところでしょう。
33万円以上の現金または20万円以上の財産
その振り分け基準ですが、正直裁判所によって異なります。東京地方裁判所で言いますと、債務者の財産の評価額20万円以上、33万円を超える現金を持っている場合は管財事件となる可能性があります。債務者の財産としては、例えば、不動産、保険の解約返戻金、退職金、自動車などがあります。
免責不許可事由がある
個人の自己破産であれば同時廃止事件として申し立てるのが一般的とお伝えしましたが、破産に至った理由によっては同時廃止ではなく管財事件となる可能性があります。
例えば、
・ギャンブルや投資などの浪費
・過去7年以内に自己破産をしている
・特定の債権者だけに返済する(偏頗弁済)
・質入れ
・自己破産することを隠して新たに借り入れる
免責不許可事由以外にも、法人の代表者だけが自己破産することはできません。その会社も原則として破産手続をすることになり、また管財事件となります。これは、法人となりますと、法人が管理する備品や不動産、従業員の給料など複雑になることもあるので、破産管財人の下で破産手続が進みます。
自己破産手続は弁護士にご相談を
手続上、自己破産は債務者自身でも行うことができます。
しかし、その場合、原則として管財事件となり、管財人との面談や追加提出資料の収集など負担はかなり大きいと言えます。
ここまでお読みになって、自分は同時廃止の扱いになりそうと思っていても、申立前の準備にはかなりの時間がかかることになり、やはり負担は大きいと言えます。
自己破産するかお悩みでしたら、お早めに弁護士にご相談ください。
状況の把握から、免責までのスケジュールなどご依頼者に寄り添いながら最善の解決ができるよう尽力します。