どうなるの?少年事件の流れ!~弁護士に依頼するメリットとは?
日本では、満20歳未満の者による犯罪については、少年法が適用され、成人の刑事事件の流れとは異なります。
その理由として、成人は罪を犯した人に対する応報的な意味合いがありますが、少年事件は、少年法1条にある通り、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的」としていることから、少年の更生を促す手続となっています。
もちろん弁護士も弁護人又は家裁送致後は付添人として手続に関与していくことになります。
少年法における少年の種類
少年法が適用されるのは、非行のある少年とされていますが(少年法1条)、罪を犯した少年とする犯罪少年・14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした触法少年・将来罪を犯し又は刑罰に触れる行為をするおそれのある18歳未満の虞(ぐ)犯少年という3つの類型が規定されています。
さらに、令和3年少年法が改正され、特定少年という新しい概念が設けられました。これまで18歳、19歳の少年は少年法上では少年とされていましたが、民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられたものの、少年法改正後は特定少年として手続上特例がいくつかあります。
少年事件の流れ
事件発生から、少年が犯罪少年なのか、ぐ犯少年なのか、触法少年なのか、によって若干手続が異なります。
以下では、特に犯罪少年における流れについてみていきたいと思います。
なお、触法少年、ぐ犯少年、特定少年については、手続で特例などが設けられているところもありますが、大まかな流れとしては犯罪少年を中心にみていきたいと思いますので、別項目でご説明します。
犯罪少年事件
犯罪少年が逮捕された場合であっても、成人と同じように、逮捕・勾留されます。
ただし、少年の身体拘束については、精神的影響を考慮して、勾留する場合には「やむを得ない場合」(少年法48条1項、43条3項)でなければ勾留することができません。
しかし、勾留の要件、つまりやむを得ない場合があっても、勾留に代わる観護措置がとられることがあります(法43条1項)。
つまり、原則は勾留に代わる観護措置をとることとされていますが、例外的にやむを得ない場合には勾留請求できることになります。
勾留に代わる観護措置とは、検察官が裁判官に対して勾留の請求に代え、観護の措置を請求することをいいます。勾留に代わる観護措置がとられると、身柄は少年鑑別所に収容され、身体拘束期間は原則2週間とされ、特に継続の必要があるときは1回に限って更新することができます(少年法17条3項)。
その後、検察官は起訴不起訴の判断をするのではなく、全ての少年事件を家庭裁判所に送致します(少年法42条)。これを全件送致主義といいます。事件が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は事件について調査を行います。
家庭裁判所が行う調査には、法的調査と社会調査があります。法的調査とは、家庭裁判所が事件記録に基づき非行事実の存否などについて判断するもので、裁判所によって主体的に行われます。一方、社会調査は、少年に対してどのような処遇を最も有効適切であるかを明らかにするために行われ、家庭裁判所の命令に基づき調査官によって行われます。社会調査では、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等が対象となります。
そして、調査のため観護措置をとることができますが、観護措置には、調査官の観護に付する措置と、少年鑑別所に送致する措置があり、後者になると少年鑑別所に送致されることになります。いずれにしろ、期間が満了すれば、少年の身柄は家庭裁判所に戻され、社会調査結果とともに、審判を開始するかどうかを決定します。
審判を開始するかどうかは、これまでの手続の過程で、少年が十分改心し、もはや審判する必要もないと判断された場合にとられる審判不開始、保護処分が必要であると認められる場合にとられる審判開始決定、凶悪な犯罪をした場など刑事処分をすべきと認められた場合に事件を検察庁に送り返す逆送措置(逆送は14歳未満の少年には適用されません。)、の3つがあります。
審判不開始決定
審判不開始決定とは、家庭裁判所による調査の結果、少年が十分改心し、もはや審判する必要もないと判断された場合に、審判自体を開始しない旨の決定をすることをいいます。この決定が出されると、事件は終了し、以後審判が開かれることはありません。
少年法では、審判に付することができない場合もしくは審判に付するのが相当ではない場合を挙げており、前者については、非行がないなど非行事実の存在の蓋然性がない場合が典型例です。一方、後者は、調査官などによる教育的指導や非行事実はあるものの極めて軽微で、調査官や警察による教育的指導により少年の問題点が改善され再非行のおそれがなくなったなど少年の要保護性がなくなったりした場合にとられる措置で、実務上、審判不開始決定はこの事由によることがほとんどです。
審判開始決定
保護観察や少年院送致など保護処分が必要であると認められた場合は、審判が開始されます。少年審判では、原則非公開で行われ、少年に対し非行したかを確認し、その内容や少年が抱える問題点などに応じて適切な処分を決定します。
審判期日当日は、裁判官、調査官、少年、保護者、付添人弁護士が主に出席し、裁判官から少年に対する質問、少年(及び付添人弁護士)からの意見陳述、裁判所から保護者に対する質問などの手続を経て、保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致、不処分)が決まります。
不処分
少年が非行を克服し、保護処分の必要性がないと認められた場合は不処分とされ、事件はそのまま終了となります。
保護観察
保護観察は、少年院などへの送致はせずに、保護司などの監督の下で、少年が社会の中で生活しながら更生することが可能と認められるときにされます。
具体的な保護観察の内容については、一般的に、一定の住所に居住することなど、少年に対する遵守事項が定められるほか、少年に応じて特別な遵守事項が定められることもあります。また少年が月に数回保護司の下を訪れ、保護司から指導や助言を受ける方法がとられます。保護観察は原則として少年が20歳になるまで続きますが、多くはある程度の基準に達せれば20歳になる前に保護観察が終了となります。
もちろん、遵守事項が守られないようであれば、少年院送致されることもあります(少年法26条の4)。
少年院送致
少年が再非行をするおそれが高く、社会生活をしながらの更生が難しいと判断された場合には、少年院へ送致されることがあります。少年院では、生活指導から職業指導などを受けさせることで非行の矯正をします。期間や処遇はケースバイケースです。
児童自立支援施設等送致
最後に、児童自立支援施設や児童養護施設への送致です。
児童自立支援施設では、個々の児童の状況に応じた指導を実施し、自立を支援することを目的として、入所させるか、保護者の下から通わせるかのどちらかになります。ただ、多くが保護者の同意の下での入所となり(児童福祉法27条1項3号)、保護処分による場合は多くありません。
また児童養護施設ですが、保護者のいない児童や虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させる施設ですので、保護処分として児童養護施設へ送致されることは極めて少ないでしょう。
逆送
検察官送致(いわゆる逆送)は、少年を成人と同じように刑事手続によって処分すべく、家庭裁判所が決定により検察官に事件を送致する手続です。
逆送を受けた検察官は、起訴するか不起訴とするかを決めますが、原則として起訴されます。起訴されれば、通常の成人の刑事事件と同様に、裁判所で審理され、最終的に刑罰が科されます。
試験観察
原則は不処分、保護観察、少年院送致、児童自立支援等送致が保護処分としてとられますが、例外的に、少年に対する処分を直ちに決めることが困難な場合に、相当の期間、少年の生活態度や行動を観察した上で処分が決められることがあります。これを試験観察といいます。
試験観察は、保護観察にするには要保護性が大きいものの、ただ社会生活をしていく中で更生する可能性もあるという、いわば中間的処分です。試験観察の結果が良好であれば保護観察や不処分、不良であれば少年院送致として、終局処分が下されます。
触法少年事件
触法少年とは、14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年をいいます。
刑法上、14歳未満の少年の行為は犯罪とされないので(刑法41条)、取調べなど捜査は行われず、また逮捕・勾留もされず、刑罰も科されません。
手続としては、警察は触法少年を児童相談所などの児童福祉機関に通告します。通告を受けた児童相談所は必ずしも家庭裁判所に送致する必要はなく、児童福祉法に基づいた措置を講ずることになります。
ただし、児童相談所が家庭裁判所に送致することが適切と判断した(14歳未満の者であっても殺人、放火など重大事件を起こした)場合は、家庭裁判所に送致されることになります。
触法少年の場合、家庭裁判所への送致後は、犯罪少年の場合と同じです。審判期日までに調査官による調査が行われ、審判を経て、処分に関する決定がなされます。もちろん、観護措置となり少年鑑別所に収容される場合もあります(更新は1回のみ)。
処分内容についても概ね犯罪少年と同じですが、少年院送致に関しては、特に必要と認める場合に限り(少年法24条1項ただし書)で、かつ12歳以上(少年院法4条1項1号・3号)でないとできませんので、実際上、児童自立支援施設への入所といった福祉的措置となることが多いです。
虞犯少年事件
虞犯少年とは、虞犯事由があり、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがある少年をいいます。
例えば、売春行為に至らない援助交際や売春行為であっても繰り返し行っていて将来犯罪行為に及ぶおそれがあれば虞犯事由があるとされるでしょう。少年法上の虞犯事由を挙げておきますと、①保護者の正当な監督に服しない性癖のあること、②正当な理由なく家庭に寄り付かないこと、③藩財政のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること、④自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること、です。
さて、虞犯少年に対しては、捜査はされません。逮捕・勾留もされません。あくまで任意の調査がなされ、調査の結果、警察は児童相談所に通告するか、家庭裁判所に送致します。
そして、通告を受けた児童相談所は、触法少年事件と同じく、児童福祉法に基づく措置を講ずるか、家庭裁判所に送致します。
家庭裁判所への送致後は、虞犯少年の場合、観護措置となることがほとんどです。
特定少年
特定少年の場合も、成人と同じように逮捕・勾留されますが、犯罪少年とは違い、勾留の要件は成人と同じように、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、住所不定、証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれか一つでも当てはまれば勾留されます(少年法67条1項、刑事訴訟法60条1項)。
保護処分のうち、特定少年を少年院送致とする際は、3年以下の範囲内で収容期間を定めなければなりません(少年法64条3項)。
少年事件の特徴
ここまで、少年事件の大まかな流れをみてきましたが、少年事件は成人における刑事手続とは異なる特徴があります。
まず一つは、更生です。少年法の目的でも掲げられていますが、少年に対し、「少年の健全な育成」を目的として、更生させるために保護処分を行うことになっています。
次に、触法少年といった刑事責任を問えない少年に対しても事件の対象としていることです。背景には、やはり少年法の目的があるといえます。つまり、少年の健全な育成を目的とするため、本来であれば刑事責任を問えない触法少年であっても、更生のための手続をとることができるのです。
最後に、対立構造になっていないことです。刑事裁判と言うと、皆さんがイメージするのは、罪を犯した人に対し刑事責任(懲役●年を求刑する)を問う検察官、その罪を犯した人を弁護する弁護人、それぞれの主張と証拠に基づいて最終的に量刑などを言い渡す裁判官、という構造だと思います。しかし、少年事件の場合は、平たく言えば、少年が更生するためにはどういう措置をとるべきかを質疑応答を経ながら決めますので、対立構造ではないのです。主な参加者は、保護者、付添人、家庭裁判所調査官、裁判官といったメンバーです。審判日までにそれぞれ役割があり、例えば、調査官であれば、先ほどご紹介した通り、法的調査と社会調査を行い、保護者と付添人は協力しながら更生のための環境を整えたり、関係各所と連携します。
弁護士に依頼するメリット
と弁護士(付添人)の役割
少年事件においても、弁護人がする弁護活動は基本的に成人事件とは同じです。しかし、少年事件における手続を含め特有の性質があり、また少年に対する配慮などは欠かせません。
少年事件が発生した場合に、弁護士に依頼するメリットについて、依頼した場合に弁護士がどのような活動をしていくのかも交えながら、みていきましょう。
取調べに対するアドバイス
少年であっても、警察からの取調べを受けることがあります。警察でも「少年」であるため、取調べには一定の配慮はされますが、少年の意に沿わない供述調書が作成されることがあります。少年には取調べに対するアドバイスが必要ですが、弁護人と少年との間に信頼関係が構築されるには、時間がかかる場合があります。何度も少年と接見をすることで、少しずつ事件のことや学校のことなどを話すようになり、その中で少年から、取調べ時にどの点について重点的に聞かれているのかを確認することで、今後の取調べに対するアドバイスができるようになります。そのため、少年が事件を起こした際には、なるべく早くに弁護士に依頼することが重要です。実際に、保護者には話さないようなことも弁護人にざっくばらんに話すこともあります(もちろん保護者にも共有することがほとんどです。)。
身体拘束からの解放手続
少年であっても、逮捕されれば警察署内の留置施設に身体拘束されます。
慣れない環境での生活を余儀なくされるため、少年にとっては相当なストレスとなり得ます。また長期間の身体拘束は、学校から退学処分を受けるなど著しい悪影響を与えかねません。そのため、弁護人は少年が逮捕・勾留されない弁護活動をすることがあります。
具体的には、任意の取調べであれば、黙秘権があること、供述調書へのサインを拒否し得ることを説明します。もっとも、出頭を求められた場合に拒否し続ければ、逆に逮捕の危険性があることも説明します。出頭する場合には、必要に応じて、弁護人も警察署に同行して警察署内で待機することもあります(取調べに同席することはできません。)。
また逮捕される可能性がある場合であっても、弁護人が罪証隠滅のおそれがないこと、逃亡のおそれがないことなどを示して、逮捕の必要性がないことを主張する場合もあります(その際は、事前に少年の環境を整えておくことが必要です。)。
逮捕された後、引き続き勾留される可能性が高い場合は、勾留の要件を満たさない旨の意見書や勾留に代わる観護措置を求める意見書を提出することもあります。
これら意見書を提出したにもかかわらず、勾留決定となった場合、勾留に対する異議申立てや勾留取消請求をすることもありますが、こうした手続は専門的であるため、弁護士のサポートが必要不可欠です。
被害者との示談交渉
刑事事件では示談交渉が付き物ですが、成人の場合と違い、少年事件における示談交渉は少年が被害者を通じて、自らの行為と真摯に向き合うことに重要な意味を持ちます。示談が成立すればOKというわけではありません。そのため、被害者に対する謝罪は、少年から自発的に行われるべきものであり、それが結果的に保護処分にも影響を与えることもあります。弁護人は少年との接見を通じて、少年が非行事実についてどう思っているのか、被害者に対してどう思っているのかなどを聞くこともあり、時には厳しく接することもあります。
学校対応などその他
弁護人の活動は裁判関連に限られません。時に、少年が通う学校に対しても少年の普段の学校生活の状況や退学処分の可能性などをヒアリングすることがあります。学校側が少年に対しどのような措置をとるのかは学校によって異なりますが、いずれにしましても保護者の協力なくしては学校などの外部への対応は難しいでしょう。
ここまでは、少年が家庭裁判所に送致される前の段階での弁護人としての主な活動になります。そして、少年が家庭裁判所に送致された後、弁護人としての役目は終わります。もちろん引き続き「付添人」として活動することができますので、ここからは付添人としてどういう活動をしていくのかについてご紹介します。
少年が家庭裁判所に送致され、観護措置の決定がされた後は、手続として観護措置決定に対する不服申立てがありますが、認められる可能性は極めて低いです。そのため、定期的な面会はもちろんですが、調査官によって作成される処遇意見書などの閲覧や調査官と連絡を取り合ったりします。
子どもが逮捕されたら弁護士に相談を
長々となりましたが、少年事件は手続が特有であって、一回の理解では難しいです。また保護者はもちろん、調査官、学校などさまざまな人が関係してくる手続です。
少年事件で重要なのは、少年にとって適切な環境は何か、その適切な環境を整えるためには何が必要なのか、といった環境整備の実現を考えてなければなりません。弁護人又は付添人は、保護者と一緒になって、こうした点を踏まえて活動していきますので、お子さんが刑事事件を起こしてしまった場合は、早めにご相談ください。