成人事件と少年事件における示談の意味
もし、あなたが犯罪の被害に遭い、又は罪を犯してしまった場合、成人であれ少年であれ、広い意味で言えば、刑事事件となります。
そして、刑事事件に関連するワードとして、「示談」が頭に浮かんでくると思います。
一般的に、示談は、裁判で決着をつけずに、当事者間でトラブルを終わらせることをいいます。つまり、相手と交渉して、示談金をいくらにするのかを中心に、その他に宥恕文言(被害者が加害者を許し、被害届や刑事告訴をしない、あるいは既に提出済みであればこれを取り下げる)を入れるか、清算条項(後の民事上の損害賠償も含めて、一回的に解決する。よくお互いの債権債務はないことを確認する。という文言です。)などについて、示談締結を目指します。
では、少年事件でも、犯罪被害者がいる場合、示談をする必要はあるのでしょうか。少年事件で適用される少年法では、更生を目的とするため、示談はその目的を果たす役割を担えないのではないかとよく相談に来られる方が質問されます。
成年事件における示談
20歳以上の成年事件の場合、示談の成立はとても大きな効果を生み出します。
成年事件で示談が成立した場合、一般的に、宥恕文言や清算条項が含まれた内容で成立するケースがほとんどです。
そのため、後々になって、被害者から加害者に対して民事上の損害賠償請求をすることができなくなるだけでなく、被害届や刑事告訴もされません(既に提出されていれば取り下げてもらうことになります。)。
そして、加害者にとっても、被害者に対して被害弁済がなされたことで、警察又は検察としては、被害は回復しているだから、被害感情の面から、刑事処分を負わせる処分は妥当ではないという考えになります。つまり、不起訴処分になるケースが多いということです。
少年事件における示談
しかし、少年事件の場合は、全件送致主義によってすべての事件が家庭裁判所に送致されますので、示談が成立したとしても、これはどうすることもできないのです。また示談が成立したからと言って、少年に対する処分が、例えば少年院送致から保護観察処分に軽くなるというわけでもありません。
それなら示談する必要はないと思われるかもしれませんが、示談にあたって、少年が被害又は被害者に対してどの程度向き合ったのか、という事実は処分を決める上で重要な要素となります。
先ほど、少年法の目的が更生と伝えましたが、示談過程において、例えば、少年が被害者に謝罪文を自筆で書くことや同じ過ちをしないため(更生のため)にどのような活動をしていくのか、などなど被害者に対していかに自発的に誠実に対応したかということを家庭裁判所はきちんと見て、最終的な処分を決めます。
したがいまして、少年事件における示談は全く無駄ではないのです。むしろ、示談過程における少年の態度がきちんとなされていれば、より軽い処分を獲得することが可能になるのです。
そして、示談をするにあたっては、弁護士(付添人)のサポートが必要不可欠となります。まずもって、加害者に被害者の情報が知らされることはありませんので、当事者間で示談をしようとするのは不可能です。仮に学校の連絡網などで知っていたとしても、直接の謝罪は避け、まずは弁護士に相談することをお勧めします。