成年後見人を弁護士にするメリットとデメリット
成年後見制度は、認知症など判断能力が不十分な高齢者や障害を持つ方にとって、その生活や財産を守るために設けられた制度です。
この制度を利用すると、成年後見人が選任され、本人の利益を守りつつ、財産管理や治療等に関する契約をしてもらうことができます。一方で、この制度を利用することで、デメリットも存在することも確かです。
一般的に、成年後見人は、弁護士でなくても親族の方がなることもできます。しかし、多くの場合では弁護士が成年後見人を務めます。
そこで、本コラムでは、成年後見人を弁護士にするメリットとデメリットをご紹介します。
成年後見人を弁護士にする3つのメリット
1 手続を一任することができる
主なメリットといえるのが、煩雑な手続を一任することができることです。
成年後見制度を利用するためには、まず家庭裁判所に申立てをしなければなりません。その申立てには数多くの書類を集め提出する必要があり、負担となることがあります。
弁護士であれば、申立前の書類収集をスムーズに行うことができます。
さらに、成年後見人に選任されると、後見業務としてするべきことが多くあります。例えば、裁判所に本人の財産状況などについて記載する報告書の提出、必要に応じて施設との入所契約、病院の立会い、契約等法的トラブルがあればその対応など。
こうした後見業務手続は、専門的知識がなければ難しいと感じることがあると思います。弁護士を選任すれば、ご本人の利益や財産を守るために、適切かつ円滑な業務を進めることができます。
2 法的トラブルに対応してもらえる
ご本人が何らかの法的トラブルを抱えていた場合、またそれが裁判手続となる場合、成年後見人として対応しなければいけないこともあります。
例えば、ご本人の債務が収入よりも多い場合は破産も検討しますし、その他法的トラブルに関して必要であれば訴訟手続をしなければいけないケースもあります。もちろん、これら裁判手続だけを弁護士に依頼することも可能ですが、成年後見人が弁護士であれば、迅速な着手ができるでしょう。
3 ご本人が亡くなった後の相続手続も相談できる
基本的に、成年後見人の業務は、ご本人が亡くなられたら終了します。
亡くなられた後の業務としては、相続人に相続財産の引き継ぎや裁判所等に報告することですが、弁護士である成年後見人はご本人が亡くなられた時点での財産を把握しているため、スムーズに相続手続に移行することができます(その場合、弁護士は成年後見人としてではなく、相続人の代理人として相続手続をします。)。
成年後見人を弁護士にする2つのデメリット
1 報酬金が発生する
弁護士に成年後見人を依頼する場合、報酬金が発生します。
ただ、この報酬金は基本的にご本人の財産から支払われます。後見業務にも関連しますが、成年後見人は年1回裁判所にご本人の財産状況を報告すると同時に、報酬金額について裁判所に決めてもらうための申立て(報酬付与の審判申立て)をします。裁判所は提出された報告書を基に成年後見人に対する報酬金額を決め、成年後見人はご本人の財産(預貯金)からその金額を引き出します。
2 成年後見人の立場が悪用されることもある
これは極めて少ないケースですが、弁護士が成年後見人であっても、ご本人の財産を横領するというニュースがあります。
全ての成年後見人がそのようなことはしないと思いたいのですが、現実問題として成年後見人の立場を悪用する事案があります。
成年後見制度の利用は弁護士にご相談・ご依頼を
成年後見人を弁護士にするメリットとデメリットについてご紹介しましたが、そもそも成年後見制度は、本人の利益と財産を守るための制度として非常に重要な制度です。
成年後見人を弁護士にすることで専門的知識をもって、安心かつ安全な成年後見業務を行うことができます。
もちろん親族の方であっても成年後見人になることもできますが、法律に関するトラブルがあった場合にその対応に関しては弁護士にサポートが必要不可欠です。
成年後見制度を利用するかお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。