知っておいて損はない相続の基本と流れ

相続は誰にでも、突然起こり得ます。 

相続とは、死亡によって開始し(民法882条)、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条本文)と規定されていることから、亡くなられた方の権利義務を相続人が引き継ぐことをいいます。 

実際に、人が亡くなった場合に、誰が相続人となり、遺産と呼ばれるものには何があり、客観的に権利義務を承継した、しなかったことを示すにはどのような手続が必要なのか、こうした相続に関する基本的ルールを民法は定めています。 

細かいルールについては、別の機会にするとして、本コラムは、突然起こる相続に慌てないための相続に関する基本的な知識・ルールについて解説します。 

  

 相続が発生したら・・・。

冒頭でもお伝えした通り、相続は被相続人の死亡によって開始します。

開始後、まず確認するべきことは被相続人(亡くなられた方)が生前、遺言書を作成していたかどうかです。

遺言書には、被相続人による最後の意思表示を記した書面とも言われ、主に公正証書遺言自筆証書遺言秘密証書遺言がそれぞれありますが、作成しているとしたら多くの場合は、公正証書遺言か自筆証書遺言となります。

公正証書遺言であれば、最寄りの公証役場で遺言書の有無だけを照会することができます(その後、写しを求める場合には作成した公証役場から取り寄せなければなりません。)。

自筆証書遺言であれば、被相続人の家で保管されていたりすることもあるので、探してみましょう。また自筆証書遺言に関しては、法務局による保管制度もありますので、全国の法務局でデータによる遺言書の閲覧や、遺言書情報証明書の交付を受けることができます。なお、自筆証書遺言(遺言書保管制度によって保管された自筆証書遺言は除く。)又は秘密証書遺言の場合は、検認が必要となりますので、ご注意ください。

検認については、変造・偽造を防止するための手続であって、遺言書の有効・無効を判断する手続ではありません。 

 

 相続人の範囲

遺言書の有無を確認したら、次は相続人の範囲を調査し、特定します。

ご自身は会ったことも話したこともない相続人が実はいたというケースもなくはないので、一般的には、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍類を取り揃えます(その後の相続登記手続きでも必要となりますし、法定相続情報を作成する場合も必要な書類です。)。戸籍類は、基本的に被相続人の本籍地でしか取得できませんので、遠方であったり被相続人が転籍を繰り返していたというような場合には取得にかなりご負担となるかもしれません。

なお、遺言書がない場合であって、遺産分割協議によって相続財産を分ける場合は、相続人全員の合意がなければ無効となります。

 

 

 相続人の順位

相続人には相続を受けられる順位が第1から第3まで定められています。配偶者は順位関係なく常に相続人となります。

第1順位は、被相続人の子(養子を含む)で、その子が死亡している場合はさらにその子(被相続人から見れば孫)となります。これを代襲相続と言います。

第2順位は、被相続人の親です。第1順位の相続人がいないときに相続人になります。

続く第3順位は、被相続人の兄弟姉妹です。第1・第2順位の相続人がいないときに相続人になります。この場合も、その兄弟姉妹が既に死亡している場合は、その子(被相続人から見れば甥・姪)が相続人になります。

  

相続財産の調査

相続人の調査と並行して相続財産を調査しなければなりません。相続財産には積極財産と消極財産がありますが、積極財産には主に預貯金口座、不動産、有価証券、自動車、動産、保険金といったものがあり、消極財産には債務やローンがあります。 

  

相続を承認するか、放棄するか

概ねここまでで相続開始の日から3か月前であれば、相続を承認するか放棄するかの判断材料は揃っていると言えるでしょう。

相続人に与えられた選択肢は3つです。単純承認限定承認相続放棄です。

単純承認は、被相続人の財産(消極財産含む)全てを相続人として引き継ぐことをいい、限定承認は相続により取得する積極財産の限度で消極財産を引き継ぐことをいいます。相続放棄は、一切の権利義務を引き継ぎません。

単純承認に関しては、特に手続しなくても3か月が経過すれば原則として単純承認したものとみなされます。

一方で、限定承認と相続放棄は、3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません(民法923条、938条)。

 

  

相続分について

単純承認するとなった場合、複数の相続人がいれば、相続財産は相続人全員で共有します。その割合のことを相続分と言います。相続分には、法定相続分と指定相続分があります。

例えば、被相続人が遺言書で、相続財産をすべて妻に相続させるという内容であれば、それは指定相続分の一つです。

一方で、法定相続分は民法で定められた相続分のことをいい、どの財産を誰がどれだけ相続するのかを定めており、相続人によってその割合は異なります。

 

 | 相続人 | 相 続 割 合 ( 全 体 を 1 と す る )
 | 配偶者のみ | 配偶者1
 | 配偶者と子 | 配偶者:2分の1、子全員:2分の1 
※子が2名いるときは、全体の2分の1を2名で分けますので、子1人あたりは4分の1となります。
 | 配偶者と被相続人の親 | 配偶者:3分の2、被相続人の親:3分の1
 | 配偶者と被相続人の兄弟姉妹 | 配偶者:4分の3
  被 相 続 人 の 兄 弟 姉 妹 全 員 : 4 分 の 1

 

  

遺言相続又は遺産分割協議

被相続人が遺言書で相続財産について誰がどれくらい取得するのか、指定している場合は、原則としてそれに従います。

 

遺言書がない場合、あったとしても相続人全員が遺言書とは別の内容で遺産分割することに合意していた場合は、遺産分割協議をします。

まずは相続人全員による協議(話し合い)で内容を取り決めます。

しかし、相続人間で感情的になりやすく、遺産分割協議がなかなか進まないことがあります。

  

相続手続は弁護士にご相談を

以上が相続における主な手続の流れです。相続人や相続財産の調査はかなりのご負担になることもあると思います。

またこの過程の中で、例えば、遺言書無効、遺留分侵害額請求権、寄与分や特別受益、配偶者居住権、調停手続など所々で相続トラブルが起きることがあります。

さらにより簡便に相続手続がしやすいよう、法定相続情報証明制度や戸籍証明書等の広域交付制度もあります。

もちろんこうした制度を活用して相続手続を進めることはできますが、何かしらのトラブルが発生した場合は第三者である弁護士に相談・依頼することで、今回紹介した手続に関する窓口を一本化することができます。

相続トラブルでお困りごとがありましたら、お気軽にご相談ください。