選択的夫婦別姓

自由な名前、自由な生き方

夫婦同姓を強制する法律は、実質的には婚姻の際に女性に対して姓の変更を強制するものであり、その問題性が指摘されていたところ、夫婦別姓を認めていないことなどの民法の規定は憲法に違反するか争われた事件で、平成27年12月16日に最高裁は、合憲との判断をしました。また令和3年にも2度目の合憲判決が出ました。

現在日本では、選択的夫婦別姓制度の導入について検討・議論が進められていますが、選択的夫婦別姓制度が導入されることによって、国民にどのようなメリット・デメリットが生じるのでしょうか。

選択的夫婦別姓制度とは 

 

夫婦は婚姻と同時に、同じ姓を名乗るという現在の制度とは別に、希望する夫婦は結婚後にそれぞれ婚姻前の姓を名乗ることを選択できる、という制度です。 

選択的なので、同じ姓を名乗るのか、違う姓を名乗るのかを、制度として強制ではなく、自分たちで選択できる、ということです。もちろん婚姻の効力自体に影響を及ぼしません。 

事実婚・内縁との違い 

夫婦別姓と事実婚との違いは、法律上の夫婦かどうかです。 

つまり、夫婦別姓は、婚姻届を提出して受理された夫婦が、その姓を選択できるというものですが、事実婚はそもそも婚姻届を提出せず、男女間の関係は夫婦(配偶者)ではないのです。 

内縁も男女間で婚姻意思を持って、事実上の共同生活を営み、社会的に夫婦という実体があるにもかかわらず、婚姻届を提出していないため法律上の夫婦とはいえない関係をいいます。内縁と事実婚は同義なものとして扱われます。 

日本では夫婦「同姓」が原則 

 

日本では、民法750条において、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と規定されています。また戸籍法でも、「婚姻をしようとする者は、夫婦が称する氏を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。」と規定しています(戸籍法74条1号)。

このように日本では、夫婦「同姓」が法律上の原則になっています。

  

例外的夫婦別姓について

現状日本では夫婦「同姓」が原則としつつも、婚姻後にそれぞれの結婚前の姓を名乗ることを例外的に認める制度があります。これを「例外的」夫婦別姓といいます。 

選択的と何が違うのかと言いますと、例外的夫婦別姓は夫婦同姓を原則とするという前提がありますが、選択的夫婦別姓は夫婦同姓と対等な制度として扱うところに違いがあります。 

選択的夫婦別姓制度のメリット 

 

姓の変更による変更手続が不要

婚姻された方は経験があるかと思いますが、運転免許証や銀行口座名義を変更したことはありませんか。選択的夫婦別姓制度が導入されて、別姓を選択すれば、こうした手続が不要になります。 

また仕事をする上で変更したくないと考える人にとってもメリットになるでしょう。 

 
 

ジェンダー平等の促進

法律婚では、改姓をするのはほとんどが女性側です(統計上男性が改姓する割合は数パーセントと言われています。)。しかし、女性の社会進出やジェンダー平等が謳われている国際社会との調整からすれば、選択的夫婦別姓を導入することで、ジェンダー平等の実現を促進できると言われています。

 

結婚や離婚の際に、周囲に知られにくい

現行法上、日本では夫又は妻どちらかの姓にしなければならない原則ですが、選択的夫婦別姓が導入されれば、姓を変更しなくて良いので、周囲に結婚や離婚を知られる心配はなくなるでしょう。

 

選択的夫婦別姓制度のデメリット 

  

法律上は事実婚として扱われる 

現在の日本の法律では、夫婦が別姓を選んだ場合、法律上は夫婦ではない事実婚として扱われます。そうすると、法律上の配偶者ではありませんので、相続権はありませんし、医療に関する同意権もありません。 

その他にも、法律婚であれば相続税や配偶者控除を受けられますが、事実婚(選択的夫婦別姓)の場合はこうした税制優遇が受けられません。 

ただし、あくまでも現在の日本の法律に限ったデメリットになりますので、今後各関連の法改正が進めば解消される可能性があります。 

 

子どもの問題 

選択的夫婦別姓制度の最も大きなデメリットになるのが子どもの問題です。 

別姓を選択した場合、生まれた子どもの姓が夫又は妻の姓と異なる姓にしなければならない問題が発生します。一般的に、夫婦別姓の場合で生まれた子は非嫡出子とされ、母親の姓を名乗ることになりますので(民法790条2項)、父親との親子関係が認められるためには、認知の手続が必要であり、場合によっては裁判手続を行う必要もあります。また子どもが父親の姓を名乗る場合には、養子縁組の手続を行う必要もあります。 

 

家族としての証明の難しさ 

同姓であれば、対外的に夫婦や家族であることが分かり易いのですが、別姓の場合は姓のみで判断することは難しくなります。そのため、家族であることの証明が必要になります。 

 

最後に 

   

選択的夫婦別姓制度のメリット・デメリットについてご紹介しましたが、この制度が導入されることで、単に男女間の問題というだけでなく、相続や認知など様々な法的な問題が多くあるのが現状です。 

現在は婚姻時には夫又は妻どちらかの姓を名乗ることになっており、離婚した際には旧姓に戻すか、そのまま婚姻後の姓を名乗り続けるか選択できるようになっています。 

いずれにしろ、今後選択的夫婦別姓制度が導入された際には、夫婦で丁寧に話し合いをするべきでしょう。