医療機関に対し、診療録(カルテ)の開示を求める方法

 

医療過誤の疑いがあり、損害賠償請求を訴訟で行う場合、裁判所で医療過誤であるかどうかを判断してもらうためには、証拠として診療録(カルテ)が必要となります。 

弁護士に相談するとなったら、相談前にカルテを取り寄せた方がいいのか、費用がかかるので相談してから取り寄せた方がいいのか、という相談がありますが、事案によるでしょう。 

相談前に取り寄せて相談に臨めばスムーズにいくかと思いますし、相談して弁護士の見解を聞いたうえでということであれば、カルテを取り寄せるかご自身で判断できます。 

 

カルテの開示を求める方法は、①任意、②裁判手続による証拠保全、③弁護士会照会、3つがあります。①任意開示は、弁護士でなくても、患者本人又は遺族であれば請求することができ、また厚生労働省が示す「診療情報の提供等に関する指針」もありますので、本コラムでご紹介します。 

 

任意で開示を求める

任意で開示を求めるためには、その病院に対して、開示申請を行います。具体的な開示方法や開示にあたっての必要書類や費用などについては各病院で定められていますので、事前に問い合わせしましょう。

 

厚生労働省による「診療情報の提供に関する指針」

カルテ等の診療記録の開示にあたっては、厚生労働省による「診療情報の提供に関する指針」が参考になります。

この指針は、医療従事者等が患者の身体状況、病状、治療等診療過程で知り得た診療情報を積極的に提供することにより、患者が診療内容を十分に理解し、医療従事者と患者が良い信頼関係を構築することを目的として定められたものです。

 

診療記録の開示に関する原則と手続

指針では、原則として医療従事者等は患者等が診療記録の開示に応じなければならないとされています。

また開示請求できるのは、原則患者本人ではありますが、法定代理人や代理権が付与されている親族や任意後見人なども患者本人に代わって請求することができます。ただし、この場合にあっては、委任状や戸籍謄本など代理権を証する資料を提出することになります。

実際の手続ですが、医療機関の管理者は診療記録の開示手続を定めることになっていますので、病院ごとに異なります。

なお、一般的に、開示の申立書には申立ての理由を記載する欄が設けられていることがありますが、指針では「患者等の自由な申立てを阻害しないため、申立ての理由の記載を要求することは不適切である。」とされています。

 

任意開示を拒否されたら?

お伝えした通り、任意開示は応じるのが原則ですが、指針上、例外として、医療従事者等は、第三者の利益を害するおそれがあるときや患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるときは、診療情報の提供の全部又は一部を提供しないことができます。その際、理由も示さなければならないとしていますので、任意開示を拒否されたら弁護士に相談しましょう。

 

もちろん、任意であっても弁護士に手続を代行してもらうことはできます。ただし、開示請求するだけという依頼内容は受け付けていない弁護士もいますので、事前に確認しましょう。

 

裁判手続による証拠保全

任意で開示を求めても、その全部が開示されるとは限りません。全ての開示が受けられない場合には、裁判所を通じた証拠保全という手続を検討します。

一般的に、医療ミス・医療過誤によって医療機関を相手に訴訟を提起する場合は、カルテや診療情報といった証拠が絶対必要になります。しかし、訴訟を提起する前に、医療機関によって改ざんされるおそれがあります。

こうした事態に備えて、裁判官が病院に行って診療情報をコピーして、証拠の保全をします。

この手続は、裁判所で行いますが、事前に医療機関に知られることはありません。つまり、抜き打ち的な感じで、当日に突然裁判官が現れて、カルテや診療情報を裁判所を介して入手することができます。

手続に関しては、裁判官とも面接することもあり、かなり専門的な知識や難しさがありますので、弁護士に依頼するケースがほとんどです。

 

弁護士会からの開示請求

弁護士会から弁護士会照会に基づき診療情報の開示を受けられることもあります。弁護士会経由ですので、所属する弁護士でなければこの制度を利用することができません。

こちらもやはり弁護士でないと利用できませんので、弁護士に相談することをお勧めします。

 

最後に

医療機関に対するカルテ等の開示を求める方法についてご紹介しました。

カルテの開示方法については多く相談が寄せられていますが、このような方法があるんあだ、という意味で知っておいて損はないと思います。

もっとも、医療過誤があったのか、については具体的経緯や事情など詳細に検討に検討を重ねる必要がありますので、医療問題でお困りの方はお気軽にご相談ください。